現在の介護施設では欠かせない存在『機能訓練指導員』
「介護施設のリハビリ職」という認識は定着してきたものの、他にどんなことをする人なのか、明確な仕事内容などは曖昧に理解している方も多いのではないでしょうか。
今回は、『介護施設のリハビリ職』という仕事をもう少し深く理解してもらい、そしてもう少し身近に感じてもらえるように、
現役の機能訓練指導員が、この仕事を掘り下げてお伝え致します。
機能訓練指導員って資格なの?
対象資格
念の為、知らない方のために要件からお話し致します。
『機能訓練指導員』という資格はなく、介護施設の役割のことを言います。
以下の資格のいずれかを持っている方が対象です。
- 看護師(准看護師含む)
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師
- 鍼灸師(半年間の実務経験が必要)
機能訓練指導員の養成学校はなく、これらの資格を取得した方が、介護施設で機能訓練指導員として働くことが認められています。
仕事内容
介護施設でのリハビリ全般を行います。
しかし、介護施設では”機能の維持”を目的とすることが多いため
「リハビリ」ではなく「訓練」と表現することが多いようです。
詳細
主に介護保険を利用する方に対して、その方の機能維持・向上を目的に、訓練計画の立案・実施を行いますが、もちろんそれだけではありません。
介護施設での機能訓練指導員の仕事内容を、以下に細かく記載しました。
機能訓練指導員の仕事内容(詳細編)
- 基本動作訓練・評価
- 日常生活動作訓練・評価
- その他訓練・評価
- 介助方法の提案
- 個別機能訓練計画書の作成
- 生活機能チェックシートの作成
- 日々の記録
- サービス担当者会議への参加
以下にそれぞれの詳細を記載します。
1. 基本動作訓練・評価
立ち上がる・座る・歩く・乗り移るなど、その方の生活を意識した基本動作を訓練・評価します。
利用者様の残存機能と自立度を把握し、どのくらいの介護が必要で、どのような介助をしたら良いのか。
ということを機能訓練指導員の視点で判断します。
2. 日常生活動作訓練・評価
介施設では、「3大介護」言われる、食事・排泄・入浴という内容をメインに訓練や評価を行います。
食事の場面では、「どうやったら快適に食事することができるのか」「どうやったら自分で食べることができるのか」などのことを意識して観察し、機能訓練指導員としての視点で、食器の選定や姿勢の調整、環境設定などのアプローチをします。
排泄の場面では、「トイレでできるのか、Pトイレがいいのか、おむつなのか」「どんなリスクが想定されるのか」など、利用者のレベルを把握し、機能訓練指導員としての視点で、介助方法を検討します。
入浴の場面では、「どのような方法なら安全に入浴できるのか」「どこまで自分でできるのか」などを機能訓練指導員の視点で判断し、介助方法を検討。そして介護職員への提案を行います。
日常生活動作の訓練や評価は、入所施設で行うことが多いです。
3. その他訓練・評価
関節可動域訓練、筋力訓練、体操なども行います。
4. 介助方法の提案
現在の介護は「自立支援」という思想が基本です。そのため、機能訓練指導員としての視点で、その利用者様の自立支援を意識した介助方法を検討し、介護職員へ提案します。
※自立支援については別の記事で紹介します
5. 個別機能訓練計画書の作成
介護事業所の売上にあたる加算(個別機能訓練加算)を取得するためには、個別機能訓練計画書を作成し、定期的に更新していく必要があります。
6. 生活機能チェックシートの作成
いわゆるアセスメントシートと言われるものです。これも、個別機能訓練計画書と同様に、加算を取得するために必要な書類になるため、定期的な更新が必要です。
7. 日々の記録
訓練を行った利用者様のお名前、実施した時間、バイタル、ご様子などを記録します。
それだけではなく、参加した委員会、会議、レクリエーション、行事。他職種の申し送り内容など、さまざまな事柄を細かく記録することが重要です。
8. サービス担当者会議への参加
サービス担当者会議とは、ケアマネージャーを中心に、利用者様のご家族または代理人を交え、各職種よりご利用者様の最近の様子やサービス提供内容などを説明する会議です。
1人の利用者様に対し、最低でも6ヶ月に1回開催されます。
機能訓練指導員としては、
- 訓練計画内容
- 現在の状態
- 実施状況
- 状態の変化
- 今後の方針
- 本人・家族の要望
これらの内容を中心に、ご利用者様・ご家族様と話し合います。
機能訓練指導員って介護施設にはたくさんいるの?
機能訓練指導員の配置要件
介護施設には機能訓練指導員は大体1〜2人しかいない施設がほとんどです。
これは、加算の配置要件が関係しております。
入所施設で個別機能訓練加算を取得する場合は、99人の入居者に対し1人で良いとされています。
通所介護では、1人の機能訓練専従者がいれば加算は取得できます。
このように加算要件に記載されいているため、事業所には1〜2人しかいない場合が多いです。
また、機能訓練指導員を雇用する場合、他職種よりも時給が高い傾向にあるため、人件費削減の観点でも、このような状況にあると思われます。
機能訓練指導員の給料・福利厚生は?
機能訓練指導員の給与事情
”機能訓練指導員”という特殊な性質上、さまざまな資格者がおり、
さらに、年齢・経験・地域にも左右されるため、機能訓練指導員の給与事情もさまざまです。
ネット記事に記載されている情報では、年収350万円〜450万円と記載されていることが多いようです。
機能訓練指導員の福利厚生について
接骨院やマッサージ院などと比較すると、
介護施設では、社会福祉法人や株式会社などの法人が運営していることが多いため、福利厚生は充実する傾向があります。
社会保険はもちろん完備。賞与や、研修費の補助、資格取得支援制度。リロクラブやイーウェルなどのエンタメ系の福利厚生などなど。
さまざまなサービスを受けることができます。
勤務時間について
介護施設での勤務時間は、8時半または9時〜18時までの8時間勤務が基本です。
機能訓練指導員の人数でもお話しした通り、施設には1〜2人程度の配置のため、
1日のスケジューリングが立てやすく、基本的に定時で上がれることがほとんどです。
機能訓練指導員ってメリットばかり?
介護施設で働くことはメリットも多いのですが、リハビリ専門職以外の資格者からすると、専門的技術を磨ける場面が少ない。というデメリットもあります。
知識やスキルがなくても働ける?
結論から言うと働けます。
しかし、病院や接骨院とはまったく畑が違います。
そのため、理学療法士であろうが柔道整復師であろうが、介護職員やその他職種から見ると同じ「機能訓練指導員」です。
そして相手は患者ではなく「利用者」です。患者との大きな違いは、治療の場ではなく『生活の場』というところです。
入所施設でいうと、利用者様はそこで暮らしています。その生活環境に入って、介護や医療などのサービスを提供しています。
何も知らずに働き始めると、まったくの畑違いに大変な思いをする場合もあります。
入社早々挫折しないためにも、最低限、介護の理念や機能訓練指導員の目指すべき方向性などは学ぶことをおすすめします。
まとめ
『機能訓練指導員』という仕事はまだまだマイナーな仕事です。
そのため、現場では「機能訓練指導員の研修制度が充実していない」「機能訓練指導員業務内容が標準化されていない」などの課題を抱えている施設も多くあります。
これは、機能訓練指導員という特殊な役割が関係していると考えています。
しかし、介護の現場での機能訓練指導員は、利用者様からだけではなく、職員からも頼られる存在です。
それは、現在の介護の考え方の変化が大きく関係しています。 今では「自立支援」という考え方が基本で、介護や介助の方法は、「利用者の残存機能を活かす」「できる限り自分でやってもらう」という視点が以前よりも顕著になってきています。
これは、少子高齢化が加速し、介護職が不足し、介護給付費のさらなる増加が懸念されるため、”健康寿命を伸ばそう”という働きが強くなったためと考えられます。
それに伴い、リハビリ的な加算が増え、介護施設では機能訓練指導員を雇うことで収入アップを図ることができ、さらに利用者の介護予防を促進する。という行政の狙いもあります。
このような状況から、介護の現場では機能訓練指導員の需要も加速しています。
コメディカルとしての働き方も多様になりつつある現在では、機能訓練指導員として働ける知識技術を持つことは、今後必須になるのではと考えます。