高齢化が進む中、介護施設の人材採用と定着化は今後ますます重要性を増していくでしょう。
そんななか、介護人材採用の2大課題として挙げられるのが、
①人材紹介料が負担となっている
②紹介会社を頼らざるを得ない
今更な問題ですが、現在でもこの2大課題に直面している事業所は少なくないと考えています。
そこで、今回この記事では、
介護施設における人材採用課題と、それらに対処するための方法について詳しく解説します。
介護施設の人材採用課題
人材不足となる主な要因は以下の4点が考えられます。
(1) 高齢化社会に伴い介護職員の必要性が高まっている。
超高齢化社会なのに少子化の日本では、「この問題が全て!」といっても過言ではないかもしれません。
だからといって、世の中の流れに身を任せていたら、人手不足は加速していき、最終的に介護サービスの質の低下や事業所の指定基準を満たせず、減算となり施設の運営負担へとつながり、最悪のケースへと発展しかねません。
(2)離職率問題
「介護業界の離職率は高い。」と言われ続けてきましたが、実はそんなことないんです。
以下の表をご覧ください。
現在では介護職以外の産業と比較しても、離職率に大きな差はないことがわかります。
【介護現場は以前よりも働きやすくなっている】といえるます。
【働きやすい】の定義は様々ではあると思いますが、
- 給与水準が上がっている
- 勤務時間が改善している
- 教育制度が充実している
この3つが、介護現場の働きやすさが改善傾向となっている大きな要因なのではないでしょうか。
ではなぜ、介護職の離職率問題がいまだ払拭されないのでしょうか。
この問題に関しては、公には言えない様々な問題があります。
知りたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。
丁寧に解説いたします。
(3) スキル課題
介護職員のスキル不足というよりも、若い世代とベテラン世代の知識・技術のギャップが大きいことが課題にあがります。
介護保険が発足したのは2000年のこと。介護福祉士はまだまだ若い資格であるため、知識や技術は日々アップデートされています。
そのため、若い世代は経験こそ劣るものの、技術や知識面ではとても優れている方が多い印象があります。
アップデートにベテラン職員が着いていけず、いわゆる『お局化(おつぼねか)』してしまう介護職員もちらほら見られます。
その『お局さん』が介護現場では、悪い意味で大きな影響力となり、【職員が定着しない】という問題が起きていることは意外と多いのです。
『お局さん』の特徴は
- 基本的に新しい知識・技術・人は受け入れない
- なぜか常に機嫌が悪い
- 自分の思い通りにいかないと気が済まない
- 目上の人にはへりくだる
- 失敗は人のせいにする
- 仕事は休まないが業務はさぼりがち
これらの中で1つでも当てはまるような人がいれば、それは『お局さん』タイプなので注意が必要です。
このような『お局』を生み出さないためには、ベテラン職員への研修制度、いわゆる【階層別研修】が充実していることがとても重要です。
研修制度の不備や、現場での教育体制が整っていないことが原因で、質の高い介護サービスの提供が困難になっているとともに、
人材が定着せず、結果的に『人材不足』を招いている場合もあります。
(4) 採用コストの高騰
人材の採用をする場合、介護事業所では紹介会社を利用することが多くあります。
しかし、紹介会社を利用する場合かなりの額の手数料が発生します。
手数料とは、人材紹介会社を通じて介護職員を採用した場合に発生する費用のことを指します。
介護職員の採用手数料は、一般的には、採用した介護職員の月給の一定割合に相当する金額が相当します。
この割合は、人材紹介会社ごとに異なりますが、採用した人材の年収の20〜30%程の金額が一般的な範囲となっています。
金額に表すと、おおよそ100〜130万円ほどになります。
介護職員の給与水準は上昇傾向のため、採用手数料も必然的に上昇している印象です。
この紹介料に関して、人材紹介会社は高額な広告費と営業プロセスを駆使して、転職を希望する優秀な介護人材を確保しています。
また、面接の際聞かれやすい質問や印象の良い答えなどを教えてくれます。
エージェントや会社によっては面接に同行してくれる場合もあり、質の高い付加価値を提供しています。
そのため、採用手数料は必然的に高額になっていきます。
しかし、介護人材の不足が深刻化している現在では、その紹介手数料が年間で数百万円にのぼる事業所もちらほら。
経営に大きな影響となっている事業所も少なくはありません。
さらに、採用手数料を支払っても妥当な人材を採用することができない場合もあります。
そのため、企業側は他の採用方法や人材予備策を模索する必要があるかもしれません。
人材採用課題への対策
介護施設が人材採用課題に対処するための対策をご紹介します。
1. 労働環境の改善
労働条件を改善し、働きやすい環境を整えることが重要です。 労働時間の短縮、休暇制度の充実など、労働環境の見直しが求められます。
2. 育成・研修制度の充実
スキル不足を解消するためには、新人研修や階層別研修、キャリアアップ研修などの育成・研修制度を充実させることが必要です。また、現場でのOJTや、メンター制度を導入することで、スタッフ同士のスキル伝承や支援体制を強化しましましょう。
3. 採用戦略の多様化
人材不足に対応するためには、多様な採用戦略を取り入れることが有効です。 具体的には、新卒採用、中途採用、パート・アルバイト採用、シニア層の再就職支援、外国人介護職員の採用など、間口を広げて人材を確保しましょう。
4. 採用ブランディング
強化された優秀な人材を引き寄せるために、採用ブランディングを強化することが重要です。また、現職員の声を活用した情報発信や、SNSを活用した採用活動も効果的です。
5. 採用コストの削減
採用コストを削減するためには、求人媒体の効果的な選定、SNSや自社ウェブサイトでの求人情報発信を強化しましょう。また、SEO対策や、地域密着型の採用イベントの開催など、低コストで出場できる方法を検討することが効果的です。
まとめ
介護施設における人材採用課題は、人手不足、高い離職率、スキル不足、採用コストの高騰と多岐にわたります。これらの課題に対処するためには、
- 労働環境の改善
- 育成・研修制度の充実
- 採用戦略の多様化
- 採用ブランディングの強化
- 採用コストの削減
といった対策が求められます。
今後も高齢化が進む中で、介護施設は人材採用課題への対策を継続的に見直し、適切にに対応することが重要です。組織全体で取り組むことで、より質の高い介護サービスを提供し、働く職員の満足度向上を実現しましょう。
現状の展望
今後介護施設においては、以下のような取り組みが期待されます。
(1) テクノロジーの活用 IoTやAI技術を活用した介護サポートツールの導入により、職員の負担軽減や効率化が図られます。
(2) 地域住民や地域企業との連携を強化することで、地域密着型の人材確保や職員のスキルアップが期待できます。
(3)人材育成は短期的なものではなく、長期的・継続的に取り組むことが重要となってきます。
(4) 働き方改革を推進し、柔軟な働き方や多様なキャリアパスが選択できる職場を目指すことが求められます。
これらの取り組みを通じて、介護施設の人材採用が解決されることで、高齢者に対する質の高い介護サービスの提供が実現できるでしょう。基盤を強化するだけでなく、高齢化社会全体の持続的な発展にもつながることになります。